スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

~個人戦~ 『本塔の事件』後編

~個人戦の部~
『本塔の事件』


「お~い、Nよ! ちゃんと説明し給え」
「そうだよ、N。なんで今日は《本の塔》が出てこないことが解ったのか、ちゃんと説明してよ」
場所は図書室。日時は、俺の久々の登校から一日経っている。
昨日あることに気づいた俺は、予言したのだった――もう《本の塔》は出てこないと。
「簡単なことですよ。私が《本の塔》ができる条件を排除したんです」
「はあ? 意味わかんないよN君。いったい何のことだい?」
羽衣田がそう叫ぶ。見ると委員長の顔も不満そうだ。
まあ、納得せんわな。
だが、これからの推理はあまりにもばかばかしい。正味推理ですらない。
しかしながら悲しいことに、推理するのは俺ではなくもう一つの人格なので、俺の意見は尊重されなかった。
「簡単な推理ですよ。まず、委員長氏が言っていたように、下校時刻ぎりぎりまでは犯行が行われていません。つまり《本の塔》は下校時刻が過ぎた後に創作されていることがわかります。ですが下校時刻後に、はたして生徒が《本の塔》を作ることができるでしょうか?」
二人の反応は、否だった。
「そうです。ですから私はこの犯行は生徒を除く学校関係者だと思ったわけです。そこで注目するのは《本の塔》が作られた三日前とそれ以前とで何か変わったことがなかったのか、です。お二人さんはそれが何かわかりますか?」
二人は首をかしげる。当然だ、情報が――推理の欠片がないのだから。
「それは、校長先生が学校に夜遅くまで残るようになったことですよ」
二人の顔を見るとやっぱり知らないようだ。
「N、それはどういうこと?」
「実はですね――」
ということで二人に校長先生が夜遅くまで酒に惚けていることを話した。
「……なんていうか、唖然の一言だね」
委員長はそう言った。うん、至極まっとうな意見だ。羽衣田も首を縦に振っている。
「ということで――」
「ちょっと待った!」
俺が推理を続けようとしたら、止めに入ったものがいた。当然羽衣田ということで……。
「はは、きみの言わんとしていることは解ったよ、N。つまりはこういうことだ。酒に溺れた校長先生は酔っぱらい、ふと図書館に入ってしまう。そこで、何が何だか解らないまま、椅子を運び、本を積み、《本の塔》を作り上げたということだね。どうだ、名推理だろう」
……いやいや。
「羽衣田さん、それは違います。そもそも三日間連続で酔っぱらいながら図書館にはいるなんてことがあるでしょうか? 可能性はかなり低いでしょう。それにそんなことしたら、図書館活動を妨げたとして学校中で問題に取り上げられますし、そんな失敗をあの校長先生がするとは考えられません」
そう、あの校長、結構適当なことやっているが、ちゃんと一線を守って上手く立ち回っている人なのだ。だからこそ、どこを批判したらいいのか解らなくて見ている側は困るのだが。やっぱり、部長と似ている……。
「むう。まあ、その点に関しては、N君の意見を尊重しようじゃないか」
羽衣田は苦し紛れにそう言った。まあ、そこそこいい線いってる――わけでもないけど……。
「で、N。続きの推理を」
「ええ、そうですね。今の私の情報で、《本の塔》が出るようになってから、校長先生が夜遅くまで残っていることが解りましたね。そしてもう一つ、今回の事件に必要なことがあるんですよ。何か解りますか?」
ま、解らないだろうな。やっぱりこれも情報の問題だし。というかもう一つの人格よ、わざわざ疑問文にする必要性はあるのか?
「おい、N、焦らさずにちゃんと話してくれ」
羽衣田はそう叫んだ。で、委員長の方を見るとなにやら考え込んでる様子――そして、何かひらめいたようだ。
「あ、解った。って、完全に解ったってわけじゃないんだけど――もしかして校長先生のお孫さん?」
お、なかなか鋭い。さすが委員長だ。
「ええ、その通り。コナン君のことですよ」
「コナン君?」
ああ、また話がややこしくなることを……。二人して首をかしげる。
「ああ、コナン君というのは、お孫さんの名前です。本名は江戸川コナン君なのだそうです」
……この二人に嘘ついてどうする。
「へえ、同姓同名がいるんだね」
「ほう、一度会ってみたいものだ」
なんか信じちゃってるし。説明するのも面倒だし、コナン君で通してしまおう。
「で、コナン君がどう関係しているの?」
「ええ、実はですね――」
一拍おいてこう答えた。
「コナン君こそが《本の塔》をたてた張本人なんですよ」
「え?」
二人は驚いた表情を見せる。
「真相はこうです。コナン君は遊びほうけている校長先生に疲れ、途中で酒飲み場から出ます。そこで目につけたのが図書館。彼は図書館に入りいろいろな本が並んでいるのを見ます。そして、その中で一つ手に取りたい本を見つけました。しかしその本はとても高いところにあり、彼の身長では手は届きそうにありません。そこで考えたのが――」
「《本の塔》だったわけか」
委員長が俺の推理をつないでくれる。
「でもさ、N。別にわざわざ《本の塔》を作らなくても、図書館には梯子があるじゃないか」
「ええ、その通りです。そこが今回の推理のミソです」
と言ってもたいしたことではない。
「実はコナン君――高所恐怖症なんですよ」
そう、その通り。俺がコナン君に「鳥が好きなんですか」と聞いたら彼はこう答えた、「怖い」と。好きでも嫌いでもなく、怖いのだそうだ。聞くところによると「だって、鳥って平気で高いところを飛んでるでしょ。でもその平気――当たり前が怖い。だって普通だったら、いつ落ちるかわからないところにいるのって怖いじゃん。ホント、鳥っていったいどういう神経しているんだろうね。怖くてたまらないよ」だそうだ。で、つまるところ「高所恐怖症なんです」だと。うむ、どうやらコナン君はお祖父さんからは想像ができないくらい哲学的なようだ。
「なるほど。そういえばここの図書館の梯子って一段一段が高いもんね。僕らからしたら平気だけど、きっと子供からしたら怖いんだろうね。だから、より地盤が安定する大判で、しかも必要最小限になるように本を積んだということかな」
「ええ、そういうことです。僕らの先入観が推理を阻害していたんですよ」
そうかっこよく締めたところで羽衣田がこう言った。
「はは、なんだ。結局僕が最初に言った案で合ってたんじゃないか。やっぱり僕は天才だ!」
まあ、無視。
「で、N。どの要素を排除して《本の塔》が作られるのを止めたの?」
「ええ、校長先生に頼んで酒を飲まずに早く帰るように言いました」
まったく、子供を放っておくとは、児童放棄もいいところだ。そこんとこ厳しく言っておいた。
「でもN君よ、どうしてこの図書館が夜遅くになっても開いていたんだい?」
……そう、そこが一番怖いところ。
「ええ……たぶんそれは――」
うう、あんまし言いたくない……。
「部長氏のせいでしょうね……」
そう言ったとたん二人の顔が凍り付く。
「おそらく一日目はただの偶然――偶然部長も夜遅くまで仕事をしていたんだと思いますよ。いえ、偶然だったと信じたいです」
えらく控えめな態度だな……。
「ですがその次の日からは、委員長も言っていたように、事情を知っていたはずですから意図的に開けていたんでしょうね……」
二人は沈黙する。なんせ、前回の《図書館コード》に続き今回も部長氏が絡んでるんだもんな……。二度も暗躍するとは、部長氏もただ者ではない。
「で、でもさ、前の事件では『図書館の知識を深めてもらう』っていう目的があったじゃない……。だからきっと。今回も何か――」
委員長は自分の言葉を途中で切らした。まあ、本人も希望的観測だと解っているんだろう。……ってまてよ、前回の目的は、結局の所『ミステリー気分を味わいたい!』じゃなかったか? だとしたら今回も……。
「ま、まあ、あえてあげるとしたら、最近図書委員がろくに本の返却もできていないから、それを更正しようとするきっかけを作りたかったんじゃないでしょうか……」
どうやらもう一つの人格も苦し紛れのようだ。何なんだよ《きっかけ》って。なかなか笑える冗談だ。いや、笑えない冗談か……。
「ということで、これにて《本塔の事件》は解決だな。はは、やっぱり僕の手にかかればこんなのイチコロだなぁ」
おい羽衣田、解決したのはお前じゃないだろう。それにイチコロは死語だぞ。見ると委員長もため息をついている。
まあ、なにはともあれこれで《本塔の事件》――ネーミングセンスは悪いが――は解決だ。
皆さん、お疲れ様。

その日の放課後、俺は相変わらず図書館へ行くために、階段を下りていた。窓からは、野球部やサッカー部が頑張って部活をしているのが見える。
そんな中で俺は物思う。いったい、部長氏は何者なのかと。
――まあ、そんなに思い詰めることもないんじゃないですか?
って、おい。いきなり話しかけんな。読者が混乱するだろうに。今回はなしの約束だったはずだが、人格の相互会話。
――いえ、でも一応ね
なにが「一応」だ。そんなオプションいらん。
――で、本題の部長氏ですが、あんまり心配する必要は無いと思いますよ
……本当にそう思うのか?
――……まあ、はいとは言えませんね
ほら見ろ。だっていつもなにか事件を持ってくるのは部長氏なんだから。
――ですが、次何か企んできてもこちらが推理してあげればそれでいいじゃないですか
何かすごく楽観的だなお前。
――まあ、悟りの境地というやつです。要は諦めているんですよ
はあ、もう一つの人格もこれか……。できたら俺は、企みが生じる前に阻止したいところだね。
――何故ですか? さっきあんなことを言っておきながら何ですけど結構楽しいじゃないですか。
いや、なんていうかね、《ごたごた》は《探偵機関》のほうで十分なんだよ、まったく。できたら無事平穏に学校生活を送りたいものだ。
――本当にそんなことが可能だと思っているんですか?
その質問に俺は沈黙する……。認めたくないからな。
窓から外を覗くと、桜の木に残っていた最後の花が風で散ってゆくのが見えた。
どうやら俺の平穏はないらしい……。
――《探偵は事件を呼ぶ》んですから
まったく、最後にいやな言葉を聞いたものだ。
俺は今後の平穏を祈りつつも、もちろんそうならないこともうすうす気付きつつも、いつも通り図書館へ向かう――。
                                 
                                  
(FIN)
スポンサーサイト

comment

Secret

カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
最新記事
FC2カウンター
プロフィール

rstiob

Author:rstiob
『洛星図書委員会OB日記』へようこそ!
最低月一回は更新していきたいと思います。

月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
検索フォーム
リンク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。