スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

~個人戦~ 小説『本塔の事件』 前編

~個人戦の部~
『本塔の事件』


一面が桜色に染まる春が過ぎ去り、季節は夏に移り変わろうとしていた。
 そんな暖かな日、俺は1週間ぶりに学校に登校しようとしていた。何故一週間ぶりなのかというと《探偵機関》のほうでちょっとしたごたごたがあったからだ。そのごたごたについてはあえて語るまい。ただ俺が一週間サボるために、例の外国人校長先生に、「すいません、新型インフルエンザにかかりまして」と言い訳したことだけ添えておこう。ちなみに校長先生はその返答として「アラアラ、ソレハ困ッタワネエ」と言った。全くどこでこんな言葉を習ってきたのやら……。これを教えた人の趣味を疑うな……。
 
そんなわけで学校に着くと、いきなり校長先生にあった。
見ると校長先生は子供を連れている。
「ヤア、Nサンコンニチハ。モウインフルエンザハ治ッタンデスカ?」
相変わらず、片言な日本語で挨拶していらっしゃる。
ちなみに《N》というのは俺のニックネームだ。俺の名前が「長門優」なのでイニシャルを取ってそう呼ばれている(最もその名前は偽名なのだが)。そしてまかり間違って学校にいるみんなからそう呼ばれるようになってしまった。みんなからそう呼ばれるようになった理由は――あえて語るまい……。
「こんにちは、校長先生。ええ、この通りすっかり元気になりました」
 後でつっこまれても困るので、今述べておこう。俺が会話で丁寧語を使っているのは校長先生に対する畏敬の念からではない。そんなことは断じてなく、つまるところ《二重人格》だからだ。今の部分重要――でもないがもう一度。
《二重人格》だからだ。
詳しい説明はここでは割愛させてもらう。知りたい奴がいたら「図書館コード事件」のほうを読んでくれ(もっともそんな奴はいないと思うがね)。
「ところでそこにいるのは校長先生のお子さんですか?」
さすがにそれはないだろうと思いつつ、もう一個の人格に任せきりなので、ツッコミは心の中にとどめておく。なんせ校長は御歳六十歳だ。
「イエイエ、コレハ孫デスヨ。私ノネ」
なるほど……孫ね。確かにそういわれてみればそう見えなくもない。もっとももはやクウォーターなので外国人の影は薄いようだ。俺がそう思いながら見つめると、子供は校長の影にそっと隠れた。どうやら人見知りするタイプのようだ。よく見ると目の色が青い。唯一の名残だろうか。
「そうですか。可愛いお子さんですね」
「有難ウゴザイマス」
そう言った後校長は、何か用事を思い出したようで子供と共にどこかへ行ってしまった。

さて、ようやく教室にたどり着いた俺は、久々に登校した学校の雰囲気になれようとしていて。
だがしかし、当然のことながら世の中には和を乱す奴がいるわけで……。
「大変だよ、N君!」
もちろんのこと羽衣田である。羽衣田はかなりの意地っ張りで、自分の負けを認めないところがある。いや、それはまだ許せる。問題は――
「どうかしたんですか羽衣田さん?」
「どうしたもこうしたもないよN君。きみが休んでいる間にね、事件が起きてしまったんだよ、事件が。そんでもって当然のごとくこの羽衣田様が調査に乗り出してね。でも結局解けなかった。僕が解けなかったんだ、この事件はきっとそのまま迷宮入りすると思うね」
問題はしゃべり方だ……。正直これだけは何とかして欲しいね。まったく聞いてて疲れるよ。
しかしまあ、事件と来たか。これはまあ探偵として心揺さぶるものがあるな。いやまあ、探偵するのはもう一つの人格なんだがな。
そんなことはどうでもいい。とにかく詳細を聞こうじゃないか。
「じゃあ、羽衣田さん。詳さ――」
「図書館にレッツゴーだ!」
俺の話を聞くまでもなく羽衣田は勝手に俺の腕を引っ張って図書館に連行していった。
おい、羽衣田。俺の話を聞け!

図書館に着くとそこには委員長がいた。
「やあ、N。久しぶりだね」
この委員長、冨府子規は一言で言うと真面目である。ただし真面目だからといって堅物ということではなく、むしろ柔軟な頭を持っている。カウンター当番をサボる委員が多い中、上手くまとめきるその手腕は尊敬に値するね。
「お久しぶりです、委員長。それで、羽衣田さんから事件と聞いたんですが何かあったんですか?」
「あ、いや。たいしたことではないんだけどね……」
そう言って委員長は俺を図書館の奥の方にある書架に連れて行った。
そこにあった光景は――。
「何ですかこれは?」
あろうことか、椅子に本が積み上げられていた。本棚と本棚の間に……。
「さあ、それがよくわからないんだよね。だいたい三日くらい前からかな。毎日こうなってるんだ。何度元の場所に返してもね。それにさ、昨日は放課後に残れる時間ぎりぎりまで見張っていたんだけど、この有様……」
むむ……。これはよくわからない事態だな……。
というか、この積み上げられた本を毎回返しに行っているのか、委員長は。かなり大判の本が多い気がするが。というか大判しかないと言ってもいいだろう。委員長も大変だ。
「いたずらという線はありませんか?」
一応委員長に聞いてみる。
「う~ん、どうだろ。でもそれだと動機が解らないし、そもそもそれだったら本を積み上げるだけでいいんじゃない? 別に椅子を机のほうから持ってこなくても」
「でしょうね……」
なるほど、委員長もそれなりに考えているのか……。
「はは、それではご要望に応えて僕の推理でも話そうかな」
誰も要望してない! 僕の心の中のツッコミ虚しく羽衣田は語り出す。
「僕の推理はこうだ。つまり本を積み上げてはしご代わりにしていたんだな。そうすれば大判の本や椅子を使った理由も説明がつく。ちょっとでも楽しようとしたんだな、うん。犯人は面倒くさがり、これに決まりだ!」
……やっぱりそう来たか。ある意味想定の範囲内。でも残念ながらそれは否定できる。
「ですが羽衣田さん、ここの図書館には梯子があるじゃないですか」
そう、そうなのだ。この図書館には木製の梯子がある。本棚の上部についてるパイプに、梯子の先についているフックをひっかけて使うタイプのあれだ。一段一段の段差は高いとはいえ、普通であれば上れる高さだ。本で段差を作る必要性はない。
だが羽衣田は人の話を聞いていない。
「さあ、今から面倒くさがりな人を探しに行くぞ! 僕は東棟を担当する。君たちは西棟を担当し給え。そしてこの《本塔の事件》を解決するんだ!」
そういって、図書館から出て行った。
「なんていうか、羽衣田って元気だよね……」

まあ、そういう奴だ。とりあえずほっておこう。
「ところで《本塔の事件》ってなんですか?」
「ああ、それは羽衣田が勝手にそう呼んでるだけだよ」
《本塔の事件》、《本当の事件》……ばかばかしい。何の面白みもない。こんなことがわかってしまう僕が悲しいね。
「で、この件に関して部長氏はなんと?」
部長というのは、図書部の長である。図書委員が生徒の機関だとすれば図書部は先生の機関だ。まあ、つまるところほとんど仕事をしていない。というのも現部長が司書さんに仕事を押しつけているからだ。で、当の本人は何をしているのかというと、「人生に必要なのはC調と遊び心」とかいって常に《楽しいこと》を探しているのだ……。憐れ司書さん……。
「部長にこの件を話したら――」
「話したら?」
そこで委員用は一拍おいた。まるで、何か恐ろしいことを言わんとしているように……。
「にやけた顔で『ああ、それはそれでいいんだよ』って言ったんだ……」
……なかなか恐ろしいことを聞いてしまった。あの部長のことだ、何をたくらんでいるのやら……。想像するだけで末恐ろしかった。
委員長の顔もかなり引きつっている。
「ま、まあそこは部長氏の言葉を信じようではありませんか……」
どうやらもう一つの人格も動揺を隠せないらしい。
「そうしたいところだね……」
そこでチャイムが鳴ったので、話し合いはお開きとなった。
続きは昼休みかな? (それ以前に羽衣田はちゃんと授業までに戻ってくるのか?)

さてその続き、昼休みの予定だったが、残念ながら行われることはなかった。
何故なら図書館に行く途中で、校長先生に会ってしまったからだ。
図書館は一階にあるので、階段を下りて向かっていたのだが、ちょうど一階に着いたときに、玄関の方から慌ただしく走ってくる校長先生を見つけた。というか声をかけられた。
それにしても、校長先生、いつからこんなに物語に絡むようになったんだ? 前の時は、ほんのちょい役だったような気がするが……。
「Nサン、チョウド良カッタ。頼ミ事ガアルンデスヨ」
なんかいやな予感がする。この校長先生も部長と一緒で、娯楽を求めるところがあるからな……。
「実ハデスネ、今グラウンドニ出テイル私ノ孫ヲ見テオイテ欲シインデスヨ」
うんにゃ? 意外と普通なご依頼だ。
「わかりました、お引き受けしましょう」
とりあえず二つ返事で引き受けることにする。
「有難ウ。ハハ、ヤッパリNサンハ頼リニナリマスネ」
「いえいえ、どういたしまして。それにしても、校長先生、何故自分で見ておかないんですか?」
そう俺が聞くと校長はこう答えた、何とでもないという風に。
「実ハネ最近徹夜続キナンデスヨ。夜遅クマデズット学校ニ残ッテイルンデス。ダカラチョット仮眠ヲ取リタクテネ」
……って、寝るのかよ! それは仕事の怠慢ですか、それとも保護者としての役割の放棄ですか! 全然普通のご依頼じゃねえ……。いやいや、でもまあ夜遅くまで学校に残って仕事をしてるんだから、そこは慈悲の心を持って許すべきなんだろう。
「何で夜遅くまで学校に残ってるんですか?」
おいおい、もう一つの人格よ、それは愚問だろう。学校の仕事をしているに――
「実ハココ数日警備ノ方ガオイシイオ酒ヲ持ッテキテクレルンデスヨ。トッテモオイシイデス。Nサンモ一杯ドウデスカ――ッテNサンハ未成年デシタネ、ハッハッハ」
……なにが「ハッハッハ」だ。自業自得じゃねえか……。仮眠取る資格ねえ……。
というか、その酒に対する定型句はどこで覚えてるんだ? 教えた人のセンスを疑うよ……。わざわざ学校の先生に教えんでも。
とか何とか考えてたら、いつの間にか校長はいなくなっていた。
な、逃げられた! 断ろうと思ってたのに……。
まったく、やれやれってやつか……。

外に出てみると、すぐに校長先生の孫は見つかった。
体は小さいけど、高校生しかいないグラウンドではとても目立っていて見つけやすかった。なにやら木陰で空を見上げている。
とりあえず声をかけることにする。
「こんにちは」
すると、孫はこちらを、不審者でも見るような眼で見つめてきた。
「お兄さん誰?」
ということで、校長先生から依頼を受けたことを話した。どうやら孫は納得したようだった。
そう言えばまだ名前を聞いていないな……。
「あなたの名前は何ですか?」
すると孫は、少し迷ってからこう答えた。
「……江戸川コナン――探偵さ」
……予想外。えっと、これボケてるんですよね? ツッコミを求めてるんですよね? なるほど、さっき一瞬迷ったのはこういうことか……。で、俺はなんと答えたらいいんだ?
「ああ、なるほど。では、真実はいつも一つですか」
「うんそうだよ」
あ、なんか通ってしまった。とりあえずもう一つの人格お疲れさん。
「お兄さん、ノリがいいね」
そういって初めて孫は笑顔になった。
「ありがとうございます。いつもそう言われているんですよ」
はい、そこ嘘つかない。
「あ、自己紹介まだでしたね。私はNです。名前はまだ無い」
「へえ、猫なんだ」
……て、おまえら変に意気投合してないか?
「あ、そうか。ノリのいいお兄さんだから、《Nori》だから、Nと呼ばれてるんだね」
違うわ!
「ええ、その通りですよ。名推理ですね」
だから嘘つかない……。
「じゃあ、Nよろしくね」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします」
って結局名前聞き出せてないじゃねえか。とりあえず便宜上コナン君と呼んでおこう。全くなんのコントだ……。
「で、コナン君。さっき空を見上げていましたね。何をしていたんですか?」
「ああ、鳥を見ていたんだよ」
なるほど、コナン君は鳥みたいに飛ぶことを夢想してたのかな?
「鳥が好きなんですね」
その質問にはしかし、コナン君は少し沈黙した。やがて――
「ううん、怖い」
――不意に、全てが繋がった。

(後編に続く続く……)


(BMIS)
スポンサーサイト

comment

Secret

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
FC2カウンター
プロフィール

rstiob

Author:rstiob
『洛星図書委員会OB日記』へようこそ!
最低月一回は更新していきたいと思います。

月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
検索フォーム
リンク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。