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~団体戦~ 『希望の国のエクソダス』

~団体戦の部~
GWに読みたかった本!


『希望の国のエクソダス』 村上龍著

「2002年秋、80万人の中学生が学校を捨てた。経済の大停滞が続くなか彼らはネットビジネスを開始、情報戦略を駆使して日本の政界、経済界に衝撃を与える一大勢力に成長していく。その後、全世界の注目する中で、彼らのエクソダス(脱出)が始まった――。壮大な規模で現代日本の絶望と希望を描く傑作長編。」(文庫版紹介より抜粋)

本の紹介をしてくれと某OBから依頼を受けたとき、何にしようか実際の所迷った。最近読んだ本と言えば、遅ればせながら『ハリー・ポッター』第7巻、村上春樹の『1Q84』、『海辺のカフカ』と有名どころばかりでどうも書評を書く気になれなかったからである。
そこで今回は村上氏、といっても村上龍氏の『希望の国のエクソダス』を選んだ。
村上龍といえばテレビ東京系経済対談番組「カンブリア宮殿」に出演し、また経済メルマガJMMを主宰しているそうで、村上氏の書いた本の中でも僕の得意分野である経済小説に惹かれたからである。

さて、肝心の中身は、ポンちゃん(本名は楠田)と中村君をはじめとする60万人の中学生グループが、パキスタンで地雷処理をする少年の出現を契機に集団不登校に走り、彼らのネットワーク「ASUNARO」をつくり、ベルギーのニュース配信会社と提携しネットビジネスを立ち上げ、為替市場を出し抜いて大儲けし、ポンちゃんは国会の参考人に呼ばれるようになる。最終的には北海道に移住して地域通貨を流通させた町をつくるというもの。主人公の「おれ」はとある出版社の雑誌編集者で、パキスタンへの取材をきっかけに中村君と知り合いになり、中学生グループとかかわっていく。

ネットビジネスといってもGoogleのように検索エンジンを開発するわけでも、楽天のようにショッピングモールを運営するわけでもない。中学生のネットビジネスは全国60万人のネットワークを活かして日本各地の事件などを取材しそれをテレビ局に買ってもらうというものである。テレビ局の下請け会社を考えてもらえばわかりやすいかもしれない。ただこの点はややがっかりした。不登校の中学生とはある意味で社会に反旗を翻したわけでありそんな中学生が大人のまねごとをするのはいかがなものかと思ったからである。ちなみにASUNAROはネットビジネスで貯めたお金を使って神奈川県のホテルを買収しそこに不登校児のための職業訓練施設を作った。不登校中学生達は今の教育に不満を持って不登校したわけだから、現代日本の教育のカウンターモデルとして自分たちの新しい学校を作るのは無理もないことである。こちらも確かにフリースクールと類似する向きはあるがこの点については納得して読むことができた。

ただ、村上氏が最も描きたいのはおそらく彼らのビジネスモデルではない。彼の本書を通しての主張はポンちゃんのこの一言に集約される。
「この国には何でもある。だが、希望だけがない」
この言葉は現代日本を非常に良く表しているのではないだろうか。
奇しくも昨年から今年にかけては100年に一度の不景気、自殺者は年間3万人をこえ、小泉政権による規制緩和で生まれた派遣労働者の「派遣切り」で大量の失業者が発生し、年越し派遣村での生活を余儀なくされることとなった。『希望格差社会』という名の本がベストセラーになったのもつい最近のことである。
中学生の集団不登校という設定は単なる小道具に過ぎない。著者の願いはこの国が再び希望を取り戻し現状からエクソダス=脱出することなのではないだろうか。


(前委員長)
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