スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

~個人戦~ 舞城王太郎は「愛」を語る

~個人戦の部~
舞城王太郎は「愛」を語る


皆さんは舞城王太郎という作家についてどれくらいご存じだろうか。
舞城王太郎は2001年に『煙か土か食い物か』という作品で第19回メフィスト賞を受賞し、以後文学界の“奇才”として活躍している小説家である。
そう、紛れもなく“奇才”である。
彼の文章はどこまでも真っ直ぐで濁りが無く、あらゆるものを曝け出している。それは明らかに、明治時代から築かれた文学観に逆行する。
則ち、「テーマをひた隠しにし、あえて曖昧にすることで芸術性を醸し出す」のが後者であるならば前者の舞城は「テーマを明確に示し、かつ結論も明確に示す」ということをやっているのである。

例えば一例を挙げてみよう。
――僕は本当に起こったことは書かない。僕が書くのは起こりえたはずなのに起こらなかったこととかそもそも起こりえなかったからやはり起こらなかったことだけだ。 そういうことを書きながら、実際に起こったことや自分の言いたいことをどこかで部分的にでも表現できたらと思っている……というより願ってる。だからやはり賞太は間違っている。僕が見たものは僕が書かないものなのだ。柿緒の死はそれが実際に起こったようには書かない。

これは芥川賞候補作にもなった『好き好き大好き超愛してる』の一部である。
この部分は『好き好き大好き寵愛してる』の二大テーマである《愛》と《小説》のうち、後者についての結論部分である。
作家として登場する主人公が、自分の作品は「恋人の死を小説の題材としてとらえている」と恋人の弟に指摘された後、主人公なりに解答を得た場面だ。その語りは饒舌で、読者を魅了する。
(ちなみに本書は『世界の中心で愛を叫ぶ』といった、いわゆる“恋愛もの”にたいして警句を発している本でもある。それがもう一つのテーマ《愛》の部分。「恋人が病気になって死んで主人公が悲しむ」という“メタ化”された設定を皮肉っている。)

もう一例あげてみよう。
――我思うゆえに我ありって言うけれど、もし自分と他人がどっかでくっついていて、相手の内側にお互い入ってこれたりするんだったら、ホントに我思ってるの?ってことになる。我思ってるつもりで、実は別の誰かが思ってることもありえる訳だから、我思ってると我思ってるけど、我思ってるんじゃなくて彼思ってるのかもしれない。じゃあ我ありってことにならない。

こちらは三島由紀夫賞受賞作『阿修羅ガール』の一節である。
世界で居場所を見つけることのできなかった主人公アイコが、“臨死体験”・“己の負の人格の自覚”を通して得た“世界”に対する一解釈である。
こういったテーマに直結する哲学的な言葉をストレートに、包み隠さず語るのが舞城王太郎という作家なのである。

そしてそれは決して誤読を許さない――

舞城王太郎の文は読んでいてホッとするものがあるが、これは「誤読を許さない」の裏返しにある「多くの人に理解できるように」という「解りやすさ」があるからなのだろう。
そしてそれが則ち「愛」なのだ。
ここに舞城王太郎の文学観が伺える。
つまり「今までの小説では読者にメッセージは伝わりにくい。もっと明確に示すべきだ」というものである。
しかしだからといって、「芸術的価値」が劣るわけではない。
舞城王太郎の小説は今までの文学同様、何度読み返しても斬新さを感じ、また読み返すほどにテーマの奥深さをより理解できる作品になっている。
「真っ直ぐな言葉を使ってなお、テーマに奥深さを感じさせる」舞城王太郎はやはりただ者ではないのだろう。

もっとも、問題点が無いわけではない。
それはどことなく「自己完結感」が漂っていることである。
舞城の作品のどれもが一人称小説であり、その中で主人公は必ず何らかの解答を得るのだが、それがやや独りよがりな感があるような気がするのだ。
読者はこれにより置いてけぼりをくらう。
自分と主人公を重ね合わせにくいからだ。
そして結果として共感できないと言った事態が起きかねないからだ。
「誤読を許さない」ながらも「共感できない」とは何ともミスマッチではないか。

今後、舞城はこの問題点を取り除き、もしくは上手く利用し(おそらく舞城なら後者を選ぶだろうし、私もそう願う)、進化していくのだろう。
村上春樹の例に漏れず、賞賛されていたのに芥川賞落選という、皮肉にも喜ばしいことがあったので、将来日本を牽引する大物作家として成長することを切に望む。
そしてそれまでは、温かく一信者として応援したい。


(BMIS)
スポンサーサイト

comment

Secret

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
FC2カウンター
プロフィール

rstiob

Author:rstiob
『洛星図書委員会OB日記』へようこそ!
最低月一回は更新していきたいと思います。

月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
検索フォーム
リンク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。