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小説 『As A ……』 後書き

と見せかけて
ここからは本当に心の底からどうでもいい、超個人的な話に移ります。
どれくらいどうでもいいかと言うと、人によっては読んだ瞬間即死するくらいどうでもいい、と言うほどではないのですが、それに準ずるレベルのどうでもよさです。
どうでもよさの話はどうでもよいので、話を先に進めましょう。


Ⅰ.そもそもどうしてこうなったのか
今をさかのぼること二カ月以上前(正確には覚えていません)、図書委員会OB会長(じゃなかったかも……)に、
「私が合計五万字の超大作、『羽井田次留宇の生活と推理』を執筆している間、君は一体何をしていたのかな~?」
とかいう熱い激励の言葉を受けたような受けなかったような……
当時僕はしがない学生風情でありまして、なんだかんだでヒ素の話を書こうとひそかにもくろんでいたわけで、とこう書くと見通しが立っていたかのような誤解を与えるのですが、実は全くそんなことはなく、ただ漠然と、ヒ素が舞っている家があったら怖いな~、みたいなことを思っていただけで、最初は外から毒物が持ち込めない状況でどうやって被害者が毒殺されたのかとかいう真面目路線を考えていたわけですがしかし、それが原形をとどめていないことはパッと見ただけでわかってしまうというこの悲しさ、まさかこんな結末になるとは誰が予想したでありましょうか、いや、誰も予想していない(反語)。
反語と言えば某R高校の文化祭のバザーで『オリガ・モリソヴナの反語法』という題名からして予想外の本を見つけまして、途中までずっと「モリガ・オリソウナ」だと思ってたとかいう笑い話にもならないようなしょうもない勘違いもあったり、ロシア人の名前が皆長くて(しかも、と言うべきか、その名前には当然漢字表記なんてものは存在せず、カタカナで「ミハイロヴィッチ」だの何だの)、でももし長い名前だったらマス目埋めるのは楽なんだけどなあ、と思ったりする今日この頃。
長い名前と言えばルイズなのだそうですが、残念ながら僕は外伝まで出ているような長大作の新規開拓はとうの昔に止めてしまったので、至極残念ながらその本名をそらんじることはできないのではありますが、それでも長い名前にひかれる心はやはり存在しているようでして、『クレヨン王国 スペシャル 夢のアルバム』で仕入れた長い名前を、おそらく皆さんは何も得るところがないとは思いますが披露させていただくというこの横暴も後書きなら許されるのか、それとも後書きでも許されないのか、ちょっと不安に思いつつ……
アーレ=ミエテル=コーレ=サエテル=ソーレ=イエテル=ドーレ=ヨメテル=ピタンカ=プラズマ=サンド=モニカ
長い! 口で言うとそれほどでもないような気がするけど、「=」が入ると途端に長い!
ではもう一個。
俗名、エンリコ=デル=ナレンナー、戒名、日月火水木金土大天地大姉永代供養料様
長い!! というかこれ、名前なのか? てなことは気にせず。
どうでもいいけどこの後書き、もし良心の呵責とか感じる人がいたら、ぜひ抹消してやって下さい。
と、こういうわけで『As A ・・・』が始まったのでした。


Ⅱ.途中でいったいどうなった?
そう遠くない昔と思われるある晴れた日のこと(だったか雨だったか雪だったかなんて、本当にどうでもいいことなのです)、天啓というかなんというか、要は思い立ったが吉日というわけで買ったのだよ『クレヨン王国月のたまごPART1』買ってしまったわけですよ。
その時はまだ、この行為の本当の意味に気づいてはいなかった……。

というかね、いやな予感は薄々してたんですよ。だって、月のたまごだけでパート8まである時点で長いことは確定なわけで。しかもそれがパート1の段階ですでに九冊目(厳密には八冊目)という時点でかなり長いことは確定なわけで。
でもさ、夢水清志郎事件ノートとかパスワードとかでも十~二十冊ということで先入観にとらわれてた部分もあったわけで。いやせいぜい二十くらいが関の山的な感覚もあったわけで。
それがふたを開けてみれば四十八(厳密には四十六)。長い、長いよ、あまりにも長いよ。


しかも……
それだけじゃないんです。
このシリーズ、どういうわけか普通の本屋さんにはほとんど置いてなかったりなんかして。そんなわけで古本屋ばっかり通ったりして。場所によってだいぶ違うんですね、てなわけで炎天下靴底をすり減らして古本屋めぐり。でもまず月のたまごそろわないし。四土神見つからないし。
そうそう、ついでと言ってはなんですが、角川スニーカーのミステリアンソロジーもそろえちゃおっかなー、的な欲を出しまして。まあそろわなかったんですけど。それなりにレア度高げな短編が集ってるので、そういうものが読みたい人はぜひ、自分で探してください。
ついでついででなんですが、関田涙さん(講談社青い鳥の「マジカルストーンを探せ」の人、と言ったら分かるかな?)のノベルスも同時進行で集めちゃったりしちゃったり。読んでると、ああ、この人は書くべくしてマジカルストーンを書いたんだなぁ、と思ったりもしたのでした。
ついでのついでのちなみにで恐縮ですが、「たり」ってあるじゃないですか。これって「~たり、~たり」という風に必ず並列して使わなければならないという謎のルールがあるそうですよ。全然守れてないけど。
自分から乱しといて言うのもなんですが(なんですが、って何度も書いてて気づいたんですが、何だかいい響きですね)最近の日本語の乱れには目に余るものがあるようなないような。でも、言葉が乱れている、って感じるってことは実はすごく不思議なことなのではないか、とも思ってみたり。
どんな言葉も、聞くなり読むなりしてインプットして、書くなりしゃべるなりしてアウトプットして身につけていくわけで。そのインプットの部分に乱れを感じるというのは、自分の中に言葉の体系がないとできないことなんではないでしょうか。
とか何とか言って、無駄に引き延ばすのにも疲れてきたので、話を元に戻しましょう。いわゆる、「閑話休題」です。
書いてて思ったんですが、ときどきものすごく応用範囲の狭い四字熟語ってありますよね。「閑話休題」とか「小心翼翼」とか「一刀三礼」とか。明らかに日常会話で使わない、というかそもそもわざわざ四字熟語作る意味が分からない、そんな四字熟語。(もちろん、日常会話で四字熟語をわざわざ使うという人もまれでしょうが)
それに比べて、「永遠に」は何と使い勝手のいい言葉なのでしょう。

いつまで寝てるの~

永遠に~

みたいな感じで、ぜひ使ってください。


はあ、また書くことなくなっちゃったよ。
こんなことなら閑話休題とかわけわからないこと言わなければよかった。
と、後悔しても遅いので、前向きな話題をば。


クレヨン王国シリーズが全部集まったと言いましたが、実は嘘です。
クレヨン王国の作者である福永令三さんは青い鳥文庫での番号が20番です。
で、20-1『クレヨン王国の十二カ月』から始まって、20-48『その後のクレヨン王国』までの間の四十八冊が全部クレヨン王国シリーズなのかというと、そういうわけでもなく、7と44はクレヨン王国シリーズには含まれていないことになっています。
で、問題はその7と44で、44はどうやら『新クレヨン王国 千年桜五人姉妹』らしいと。7に至っては見当もつかないと。
いや、確かにさ、「新」ってついてるけどさ、逆にいえば「新」しかついていないわけで。それを別のシリーズ(続く気配はないですが)として片付けてしまってよいものなのか、悩んでいたりもするわけなのです。
でも、正直いい加減探すのも無理っぽいし、とにかく知ってるところは全部見たけどそれでもなかったってことは、もう手に入らないんじゃ……みたいなことも思ったり。
しかし一方ではどうしても手に入れたい、読みたい、という気持ちも厳然と存在し。だって「千年」に「桜」に「五人姉妹」ですよ。これで読みたくなるなと言うほうが無理というもの。
はぁ……


そ、それだけじゃないんです。
福永さんはエッセイっぽいものを講談社から出しているのですが、最初に買ったのが四冊目。次に買ったのが二冊目。その二つしか見つからないという怪奇現象。はさみならともかく本にも属とか科とかあるんでしょうか。
さらにさらに、何やら昔話やら絵本やら詩画集やら、曲芸的な量の作品が破滅的に散逸しているこの状況、果たして手に負えるものなのか? なんて疑問も当然のように浮かんできーの、結局は収集欲を満足させようとしているだけじゃないの? と自問したりもしーの。
いや、でも収集欲って結構大事だと思うよ。日本の経済の中の少なくない部分が収集欲で動いてる、と言っても過言ではない、かな? ちなみにかどうかは分かりませんが、ズラリ並んだライトノベルを買う気が失せるのは裏返しの収集欲です。目の前を覆い尽くす池波正太郎ワールドにひるむその心も裏返しの収集欲です。大人になって大人買いができるようになったら忘れてしまうであろう少年の日の思い出です。
大人買いと言えば、ついに買ってしまいましたよ。夢水清志郎事件ノート 原作:はやみねかおる まんが:えぬえけい。ひらがな満載のコンビが贈る全八巻。
コミックはめったに買わない僕ですが、それでも自分なりの「いい漫画」の条件というのを持っています。そんなのどうでもいい、と言う人もいるでしょうが、気にせず発表しちゃいます。
一、「顔半分がきらきらお目々」
またか! って感じですね。実際、ジャスト半分でなくてもいいです。程よい大きさであれば。顔半分が程よい大きさかどうかは個人の趣味ということで。
二、「不健全」
そうです。不健全です。健全であってはいけないのです。あ、でも、あまりに不健全すぎて有害図書指定されちゃったよ、みたいな本だとさすがに萎縮してしまいますね。そんな本に出会ったことはありませんが。
まあ、結論としては、一病息災レベルの病み方、ということです。かなり主観的ですが、ここからが真のくりてりあです。
三、「『ガラスの仮面』を目指さない」
一つには裏返しの収集欲の話です。超大長編をみると圧倒されちゃいます。
もう一つはちゃんと完結するのかどうかです。いや、完結しなくても面白ければいいのかもしれませんが、一応完結したものが読みたいじゃないですか。そういえばシャーマンキング完結したとか。
四、「KC」
これに尽きるよね。講談社だし。正直一~三なんてどうでもいいや。というか「なかよし」?


というわけで、「なかよし」最高←結論


唐突ですが、能勢電って知ってます? 知らなければ知らないでいいんですけど。
その能勢電の駅に畦野ってあるんですよ。何て読むかわかりますか?
まあ読み方は本筋とは関係ないので自分で調べてください。
で、その畦野と山下(駅名)の間にある古本市場で見つけたのが、『ミステリアンソロジーⅣ 殺意の時間割』なわけですが、(N氏は知らないでしょうが、本一冊のために県境越えてるんですよこっちは)そこでもう一つ飛んでもないものを見つけてしまったのです。
「きら☆きら迷宮」。何それ、と言う人のために説明したいところですが、僕も読んだことがないので、知っている部分だけ説明すると、
主人公の女の子の住む女子寮の一室にきらという女装した男の子がやってきて……みたいな話だったような気がします。確かミステリ。
ずっと昔に何かの単行本の広告で見て、その時からずっと読みたい読みたいと思っていた(けど名前は「迷宮」しか覚えてなかった)ので、見つけた時のうれしさと言ったらもう。
で、題名がわかったんだから京都でも売ってるだろうと思って買わなかったのが運のつき、いまだに京都市内で出会えていません。
教訓:可及的すみやかに買わなければ永遠に手に入らないものもある
なんだか漠然とした教訓ですね。


いや、説明が下手だから何だくだらないと思うかもしれませんが、絶対に面白いです(読んでないけど)。だって、
一、「顔半分がきらきらお目々」
表紙見ただけでもう明らかに満たしてるという。
二、「不健全」
いやもう設定からして危ないという。
三、「『ガラスの仮面』を目指さない」
全巻セットで売ってたけど三巻くらいしかなかったという。未完でもいいんです。
四、「KC」
当然「なかよし」に決まって……え、「ちゃお」なの?


で、でもさ……別にいいよね、講談社とか小学館とか、些細な差だよね。うん、これからは小学館の時代だよね。講談社とかだめだよね。


はぁ~……。


とこれだけ改行を連打しても文字数は増えない罠。


では気を取り直して、何の話をしてたんでしたっけ?
そうそう。クレヨン王国でした。
一応青い鳥文庫で、新のつかない分はそろったので、即席の本棚を作成して並べてみました。結構壮観。
即席本棚のメイン材料は部屋に散らばる教科書・プリント類、つまり、教科書見ようと思えばいちいち本をどけるしかないという受験生の部屋とは思えない素敵っぷり。ですがスペースの関係上どうしても一段では収まらず、二段になってしまいます。
ここで問題。二段に分けるときに、『十二か月』から順番に入れていって、入りきらない分を下段に入れるのか、それともちょうど「月のたまごシリーズ」分のスペースがあることを利用して「月のたまごシリーズ」だけを下段に持ってくるのか、一体どちらがより統一感に満ちた配列なのでしょうか。
前者はもちろん番号が完璧にそろうという点で他の追随を許しません。しかしどう考えても『月のたまごPART1』から『PART8』までは一連の作品として書かれている(時系列的に他の巻が入る余地がない)のは明らかで、『1』~『8』に限って言えば後者のほうが断然合理的です。
しかし、後者にはいくつかの欠点があります。
第一に、『月のたまごPART1』以前の物語に出てくる固有名詞が「月のたまごシリーズ」全体、特に前半に存在するということで、意図される順番としては、当然『なみだ物語』の直後に来るはず(というか、『なみだ物語』の設定自体、「月のたまご」の設定の源泉ともいえるもの)なので、その間のつながりが失われるということ。
第二に、「月のたまごシリーズ」は『月のたまごPART8』までだけではありません。大きく飛んで『四土神』以降も「月のたまごシリーズ」とされています。
ところがこの『四土神』以降の物語は時系列的には『PART8』からだいぶ先の話で、例えば初出が『カメレオン別荘村』である「ハルボちゃん」の名が登場するなど、間に別の巻が挟まっています。
『PART8』と『四土神』の間は本来大きく開いているにもかかわらず、「月のたまごシリーズ」としてまとめて並べるとその間が詰まってしまうというのが二つ目の欠点です。
並べ方の問題なんて知るか、と思うかもしれませんが、でも、ほら、一応図書委員だし、きちんと並べたいし。
ちなみに現在は前者を採用しています。深い理由はありません。


何の話でしたっけ?
え、クレヨン王国の話?
その前は?
マンガの話?
あ、そうそう、マンガと言えば、夢水清しろ……ってこれは言いましたか。
じゃあ、付け足しでもう一個。

遥か万里のかなた、新京極にそれはあるという……電波塔みたいなAの字のシンボル……そう、億千万のアニオタの集う場所、アニ○イトですよ!
のっぴきならない事情により不可抗力的に(ここ重要)アニ○イトに連れ込まれてしまった僕(当時十五歳)はそこで大変なものを発見していきました。

夢水清志郎事件ノートのマンガが全巻そろっている!

そのとき僕は新京極よりもう少し東、河原町通りにそそり立つジュンク堂BAL店に誓ったのです、いつかこの新京極のアニ○イトで、夢水清志郎事件ノートを大人買いしてやることを……

月日は流れ、高校三年生十八の夏。ダイヤモンドに目がくらんだりとか、なんだかんだで四千円もの大金を持ってアニ○イトを訪れた僕を待っていたのは……

あれれ~~、全八巻のうち八巻目しかないよ?

僕は目の前が真っ白になった。






























どうです。真っ白でしょう。
当時のことを思い出すと今でも目の前を真っ白にしたくなります。
でも改行では文字数は増えない罠。

まあ、BAL店で全巻買えたんですけどね。

でも、おかしくないですか? だってマンガですよ。それがジュンク堂にあってアニ○イトにない、こんなことが許されると思って?
いや、確かにアニメにはなってませんよ。でも、ドラマ愛の詩でやってたわけじゃないですか。NHK教育ですよ。CCさくらとかコレクターユイとかカスミンとか電脳コイルとかと同じ教育テレビですよ。
僕はその日から、アニ○イトには立ち寄らないと固く心に誓ったのです。


というか、河原町付近までいく元気もないんですが。


閑話休題。
何の話を……というパターンにも飽きてきたところなので、さっさと話を進めましょう。一万字もあれば何でも書けるとか思って脱線しすぎて八割近くを使い切ってしまいました。いい加減真面目に書きましょう、という方向に走るのも一つの手なのですが、冒頭であれだけこの後書きのどうでもよさを述べておいていまさら真面目路線に鞍替えするのも仁義にもとる気がするのでやっぱりこのままだらだら続行していきます。


Ⅲ.その後いったいどうなった?
そうです。重大な事実です。
僕が今後書きを書いているということはすなわち、
本編が書き終わっている
ということを意味します。
改行が多い?
じゃあ、ここからは改行なしで行きましょうか
実は、さる筋(相手は社会的地位のある人なので明かせませんが)から、「MTKいいよ」みたいなことを言われまして、あ、もちろんMTKって「ミュージックてれびくん」ですよ、「ミュージックテツヤ・コムロ」ではないです、念のため……って、また脱線してますね。とにかく、そういうわけで、最初は懐かしさ半分、好奇心半分で聞いてみたのですが……何この神曲奏界。
……っと思わず改行してしまうほどに、それほどにアレです。
勧めてくれた彼はどうやら世紀末あたりが守備範囲だったようですが、僕はそこら辺はおぼろげにしか覚えてなくて、(でもいくつか強烈に残ってるのは残ってます)むしろMAXのほうが印象深かったりするのですが、特にあのころはほぼ毎日(毎日はやってませんが)見てたのではないか、というのがユゲデールの一個前で――ていうか名前忘れたのかよ、などという突っ込みは受け付けませんが――何だか無駄に「――」を使うと気持ちいいですね――とにかく加藤夏希が魔王やってた頃でして、でもこうやって見てみると(聞いてみると?)意外と天てれ見てたんだなあ、と柄にもなく感慨にふけったり、また受験が終わったら見ようか、なんてことを考えたりしながら聞いていたのですが、僕としてはMTKと言えばタケカワユキヒデのイメージが先行していたので、「あこがれ」が遊佐未森ということを知ってなんか感動したり、そもそも曲名が「あこがれ」だったことを初めて知ったり、と「たり」連発でだらだら文章をつなげてみたりで結局何が言いたいのかと言うと、「飯田里穂がかわいい」←結論。
上の文、487文字だそうです(ワード調べ)。アホですね。でも、無駄に長いおかげでいいことがいくつかあります。
1.はじめて知った
「――」って楽しいですね。いくらでも――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――本当にいくらでもいけそうなところとか。
2.思い出せた
ユゲデールの一個前は「テレビア」です。でも、「――」の快感に取りつかれた僕には、上の文を修正するという選択肢はあり得ません。あしからず。
3.気付いた
そういえば、だいぶ前に、「ここからは改行なしで行きましょうか」と宣言した覚えがあります。だいぶ前のことなので記憶が定かではありませんが、たぶんその時の僕は、ここまで改行を連打することになるとは思っていなかったに違いない、いや、それとも、これも想定の範囲内だったのでしょうか。
ちなみに、本編はA4で43枚分(ワード調べ)ですが、おまけと後書き(それもここまで)だけで13枚使っています。本来の計画としては四万字に対して一万字なので11枚で済むはずだったのですが……。
というわけで、あとの四百字強をどうやって埋めるかという問題に集約されたわけですが、四百字って原稿用紙一枚分なわけで……。
それでは最後に心機一転、本当に後書きっぽいことをしてみよう。
半分が怠惰でできている僕をそれでも叱咤激励してくださったN氏、もう半分が悪意でできている僕をそれでも温かく見守ってくださったBMISさん、本当にありがとうございました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
そして、完成するかどうかも分からないのにもかかわらず、辛抱強く待ってくださった図書委員会OBの皆さん、お待たせしました。期待に添えるものかどうかは微妙ですが、何とか終わりはしました。
それから、『As A・・・』を読んでくださった皆さん、本当に、本当にありがとうございました。特に、この後書きを最初から最後まで読んでくださった方、感謝感激雨霰です。
最後になりましたが、僕を支えてくれた周囲の方々、そして本(どういう敬称をつければいいのか分からないので敬称略)に感謝の言葉を述べたいと思います。ありがとうございました。
これでちょうど五万字です。
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小説 『As A ……』 おまけ

「先生、どうしましょう。ノルマの五万字にはまだ一万字以上足りませんよ」
「ふふふ、こんなこともあろうかと」
「もしかしてまだ続きがあるんですか」
「いや、ない」
「じゃあどうやってこの先一万字も埋めるんですか!」
「楽屋オチだよ。後書きっぽいだろ」
「具体的に何をするんですか」
「ネタの解説&入れたかったネタ」

1.「As A ・・・」
 最初にヒ素の話にしようという漠然とした計画だけがあって、Asのつく題名にしようと思ってas a personの後ろについているよくわからないものを勝手に引用。

2.「プレヤード伯」
 すばる=プレヤデスから。このころはまだネタを一か所にまとめようとする意識があったような気がする。後半になるにつれてカオスの領域に突入していく。

3.「水木杏奈」
 NANA→ANNAというのが建前。実際は み 「ずきあ」 んな ということらしい。本編でも書いてるけどもう一度言うと、「白木杏奈」と一字違い。

4.「魔術少女イリーガルあずきエース」
 「まじゅつし」 ょうじょ “違法” 「あずきA」 どんだけズキア好きやねん、とN氏から突っ込まれそうな名前。元ネタは言わずもがな。これを書こうと思った主要な動機であり、結構頑張って考えたのに本題にはほぼからんでこない。長いうえにいちいち書くのが恥ずかしいためだと思われる。

5.「戦輪」「滝夜叉丸」
 たきや 「しゃまる」 ってことらしいよ。知らないけどね。ここらでやっと12チャンネルに頼るしかないという自覚が芽生え始める。

6.「グッタペルカ」
 語感の良さ。意味は特に関係ない。代表的な産業はゴム。ただし、グッタペルカとゴムは別のもの。なので本当に意味はない。

7.「C・クレット」
 シークレット。安直すぎる命名。ちょっとは考えろ、というお叱りを受けそうだが、これでも丸一日くらい考えて、思いつかなくて、後から考えようと思って、適当に作って、結局後から考えるなんて面倒なことはしなくて、そのまま適当に残った。

8.「去年レイジンハートで」
 なんとかハートってお城の名前っぽくね? という安直な発想。で、ちょうど七文字だったからなんか映画のタイトルっぽく。

9.「魔王城」
 魔王だし。

10.「食欲魔人」
 元ネタはおりがみ。もともとは女の人だけどね。

11.「庄屋・古手」
 アザミ・庄屋殺し・茶々丸と草の名前っぽいので統一しようと思った。まあ、例のごとく しょうやご 「ロシ」に ちゃ 「ちゃま」 る なわけで。さらに言えば梨花 「ちゃま」なわけで。

12.「Eastside-inn」
 東横インってことだと思うよ。Innでわかむらさきなのは黒茶ってことで。だんだんわかる人だけ分かればいいやの自己満足ゾーンが形成されつつある。

13.「パラサイト・イヴ」
 かつて社会現象になった(らしい)。まだ読んでない人は読んでみてはいかが?

14.「海堂」
 『チーム・バチスタの栄光』とかの人、たしか。

15.「森博嗣」
 『すべてがFになる』の人、最近まで「もりひろつぐ」だと思ってたけど実際は「もりひろし」だそうな。

16.「未来人か、宇宙人か、異世界人か、そうでなければ超能力者」
 順番がうろ覚えなのは仕様です。超能力者をビッグマザーと呼ぶのは母の泉。

17.「顔半分がきらきらお目々」
 これは三月の鳩笛で見た表現。最初読んだときからこれは流行ると確信していた。今のところそういう兆候は全く感じられないが。

18.「ナポレオンも愛した」
 ナポレオンの髪の毛から蓄積されたヒ素が出たそうな。それだけの話。

19.「ブラック・タン」
 黒い紅茶=黒茶=brack&tan。黒茶というより麦の海。ここらへん趣味全開感全開。

20.「黄色、赤、鶯色、鶯色、鶯色、茶色、白の計五色」
 この順に月、火、水、木、金、土、日。外側四つは曜日と色の関係。内側三つはうぐいす館。どうでもいいけど重松清ってやばいね。

21.「トマス・モア」
 イギリスの偉い人。「ユートピア」を書いたんだとか。「羊が人間を食う」とかいう名言を残したそうな。

22.「見ろ!人がゴミのようだ!」
 高いところに上る人は必ず言わなければいけない言葉。ちなみに「ラピュタ」の元ネタはスウィフトの『ガリバー旅行記』なんですってよ。

23.「$&W」
 S&Wとかいう銃があるんだとかいう。しかし、やたら銃に詳しい人ではないので、突っ込まれるのを恐れつつ。


「……どうだっ!」
「それでもあと一万字近く残ってますけど」
「こうなったら最後の手段だ、題して、後書き一万字(約)」
「先生、まさかそれって……」
「そう、そのまさかだ。残り一万字を全て後書きだけで消費しつくすという壮大無比な計画」
「ということは、本文が四万字、後書きが一万字で全体の二十パーセントが後書き……」
「それでは、怠惰と怒涛の後書きスペクタクル、はじまりはじまり~」

はい、後書きです。後書きと名乗るからには(名乗ってない? まあそれはそれとして……)後書きっぽいことをしなければならないのであります。思いつくままに挙げてみると……

1.作品解説
無理。パス。

2.関係諸氏への感謝の言葉
これは楽そう。皆々様、ありがとうございました。

3.……いや、後書きってそんなに書くことないんじゃね?
というわけで後書き終了。

小説 『As A ……』 最終回

「今日この城の中で起こったことというのは、大きく分けて二つ。一つは庄屋さんが噴水の前で亡くなっていたこと。もう一つは電話線が切られ、外と連絡がつかなくなったこと。この二つの出来事は、少し考えればわかることですが、一人の人間がやったとしたら矛盾が生じます」
先生は静かに語る。です・ます調なのは論理的に聞こえるから、らしい。(本人談)
「もしそうだとするなら、その犯人は死体を人目につくところに置いたままにして電話線を切りに行ったことになります。あるいは、電話線を切ってから殺人を犯したか。どちらにしても、発覚を遅らせようという意図のない犯行と、電話線を切るという理知的な工作は同じ人間がやったとは思えません」
「確かに自然か不自然かやったら不自然やけど、絶対にあり得へんとは言えへんのちゃう?」
「時間がないから、厳密な論理は勘弁してもらえないかな」
「何やそれ」
水木さんは呆れたように先生を見る。でも、そこにはさっき見せたような険しい表情はなかった。
「そして、外部犯の可能性もとりあえず否定して良いでしょう。一人で両方こなすのは今言ったように不自然ですから」
「ということはやはり内部の人間が……?」
ヘーゼルさんが不安げに尋ねる。先生はそれには答えず、
「電話線を切ったのは、あなたですね」
「……えっ?」
先生以外の誰もが、唖然として先生を見た。
「電話をかけに行くと見せかけて、電話線を切断した、いや、切断する必要もなかったかもしれませんね。とにかく、あなたはここにいる人たちに、警察と連絡が取れないことを納得させる必要があったんです」
「そうおっしゃるのなら、何か証拠がおありなのですか?」
「見せる時間がない、と言えば答えになりますか?」
先生が逆に聞き返す。ヘーゼルさんはそれきり一言もしゃべらない。
「じゃあ、この人が犯人なんか?」
「そうじゃない。決してそうじゃない。この人は単に電話をしなかっただけで」
「単に電話をしなかっただけ、って、どこの世界に人が死んでんのにわざわざ電話線切る人がおんねん!」
水木さんが追及する。先生はちょっと逡巡して、ヘーゼルさんの方をちらりと見てから
「警察だよ」
と短く答えた。
「警察がこの城を調べることだけは避けたかった。そうなれば城に隠されたあるものが見つかってしまう。そう思ったのでしょう。だから、警察に連絡する時間を遅らせることで、警察が来るまでの時間稼ぎをしようとした。その間に自分が見つけ出そうとしたんです」
「あるものって?」
「プレヤード伯の遺産、『金雀枝の雫』です」
ヘーゼルさんが答える。
「C・クレットの残した日記には、幼少期の記憶がまとめられた部分があります。その記述によると、クレットは伯爵からこの『金雀枝の雫』を賜り、どこかに隠したとされています。未来の、しかるべき相続者のために」
「その相続者というのが……」
「クレットの曾々々々々々々孫である、私です」
曾々々々々々々孫って何代目になるんだろうか。というか、
「先生は分かってたんですか?その『金雀枝の雫』とかいう……」
「僕はこう見えても研究者だからね、有名な財宝……もとい遺跡をチェックするのも重要な仕事だよ」
研究者って奥が深い。
「あなたはそれが城の中にあると考えたんです。しかし文化財に指定されている城内を好き勝手に捜索するのは難しい。そこであなたは観光局の職員となり、観光客を案内する傍ら、自らは城内を探しまわっていたんですね。だから今日も僕たちに自由に見学させた」
先生はヘーゼルさんを指差す。ちなみにこの指差しは国にもよるけど基本的に失礼なので、常識のある人は(ない人も)やらない方がいいと思う。
「もういいですか。ご存じなんでしょう、私に時間がないことは」
「もちろんです。でも、もし望むものを手に入れたいのなら、もう少し聞いてもらえませんか」
ヘーゼルさんが立ち去ろうとするのを先生が止める。もしかして先生はもうそのありかに見当が付いているのだろうか?
「場所について話す前に、先に明らかにしなければならないことがあります。すなわち」
そうだ。電話をしなかったヘーゼルさん。でも、それとは別に、もっと直接的に関わった人がいるのだ。
「庄屋さんの死の真相です」

「重要な点は、この城に入るとき、荷物を預けたということ、つまり、凶器となりうるものを持ち込むのは極めて困難だということです。もちろん、ヘーゼルさんなら可能でしょうが、真っ先に疑われるでしょうし、その可能性は無視してかまわないでしょう」
先生は全員の顔を見ながら話す。
「では、その凶器とは何か。これはあくまでも僕の想像ですが、庄屋さんは毒を飲んでしまったのではないでしょうか」
水木さんがすかさず古手さんの方を見る。
「といっても、誰かが飲ませた訳ではありません。みずから毒を飲んだのです」
「みずから……そんなはずはない。だってあの人は自殺なんてする人じゃ……」
古手さんは振り払うように首を振る。信じられないのも無理はない。私だってにわかには信じられない……
「そして、自殺でもありません」
え? 他殺でも自殺でもないとしたらいったい……?
「不幸な事故です」
「そんな……」
あれが事故? そんなことがあるだろうか?
「だって、事故で毒を飲むなんてことって……」
「おそらく庄屋さんが飲んだのは」
先生が後ろの噴水を指差す。
「あそこの水でしょう」
「じゃあ、誰かが噴水に毒を入れたってことですか?」
「それも違う。毒は誰が入れたのでもない、最初から噴水の中に入っていたんです」
「最初から、というのは?」
「ある種の鉱物はヒ素と結びついた状態で産出することが知られています。もしこの城の石材にそういう鉱物が含まれていたら、そしてそれが風雨にさらされ、微粒子となって水の中に、あるいは風の中へと広がっていったとしたら」
「『魔王城』伝説……」
ヘーゼルさんがはっとしたように呟く。
「おそらく、石を切り出した人たちが呪われたというのは、その時に飛び出した粉じんを吸ってしまったのでしょう。城や町の人を悩ませた奇病も、風化した城壁が舞ったり、風向きによって町の方へ流れていったのが原因だと思います。手足のしびれなんかは少量のヒ素を継続的に摂取し続けた時の症状に酷似していますし」
「でも、それはおかしいと思うのです」
今まで黙っていた古手さんが突然口を開く。
「少しずつ長い間かけて飲んだのなら目立った痕跡は残らないのでしょうが、今日初めてこの城に来た庄屋クンが致死量のヒ素を飲んだのなら、何らかの痕跡が残っていないとおかしいと思うのです。ちなみに、ヒ素を一度に大量に摂取するとおう吐などの症状が出るらしいのです」
詳しいな無駄に。
「確かにおっしゃる通りです。庄屋さんの遺体の周りには何らかの痕跡が残ってなければならない。それがないというのはどういうことか。誰かがその痕跡を消したということです。もちろん、死体が動けるはずはありませんから、誰かほかの人物の手によって」
「まだ登場人物がいるのですか」
古手さんが呆れたように言う。
「だいたいその人物は、どういう理由があってそんなことをしたのですか? 自分が殺したのではないのですから、手間のかかる偽装をする意味はないと思うのですが」
「その理由は、あなたに深い関係があるのですよ、古手さん」
意味が分からない、という顔をする古手さん。
「あなたは、ずいぶんと薬についてお詳しいようですね」
「……どういう意味なのですか?」
「疑っているわけではありません。ただ、あなたは当然疑われる位置にいたということです。あなたの肩書は疑われるに十分ですから」
確かに、毒物とか使いそうだ。薬学部だし。
「もし明らかに毒物の形跡が残っていれば、真っ先に疑われるのは、古手さん、あなたです」
じゃあ、庄屋さんの周りの毒物の跡を消したのは、古手さんに疑いの目を向けさせないため……。
「ですね、水木さん」
「……」
水木さんはうなだれたまま、何も答えない。古手さんが呟く。
「どうして……」
それでも水木さんは、固く結んだ唇を開かない。何かを必死にこらえるような表情。
「あの、お取り込み中のところ、申し訳ないのですが……」
「どうしました、ヘーゼルさん?」
「私の『金雀枝の雫』のことはどうなるんでしょうか」
「あ」
そうだった。すっかり忘れてた。
「もうすぐ七時なんですけど」
「そうでしたそうでした。大丈夫ですよ、忘れたわけじゃありませんから」
絶対忘れてたんだろうな。
「『城の中であり、同時に城の外であるあの場所』。日記によると、『金雀枝の雫』はそこに隠されている。では、その場所とは一体どこなのでしょうか」
よどみない先生の声。先生は言語学者だけあって活字を覚えるのはだいの得意なのだ。私としては言語学者なんだから人の話も覚えておいてほしいところだけど。
「『城の中』というのはおそらく文字通りの意味でしょう。問題は『城の外』です。城内で『城の外』と言えるような場所、それは」
ヘーゼルさんがかたずを飲む。
「『噴水の中』です」
「中……ですか?」
中と言われても、水しかないんじゃ?
「ちょっといいですか」
先生は驚く私たちを尻目に噴水の中に入っていく。
「先生、それ、一応文化財ですよ、入っていいんですか?」
「せっかくの文化財なんだから、直接触って体験しようとは思わないのかい」
そんなこと言って、壊したらどうする。
「やっぱり、まずいですよね、ヘーゼルさん」
「もちろん、文化財の損壊は重罪です。でも……」
ヘーゼルさんはいたずらっぽく、
「東洋のことわざで、形ある物、いつかは壊れる、と言うそうですよ」
いつか壊れるのと今壊れるのは大きな差があると思うけど。
先生は噴水の真ん中、水が噴き出すその場所にかがみ込む。先生の服はあっという間に水浸しになる。先生は水の出る根元の部分を手で探りながら、
「よし、思った通りだ」
慎重に慎重に、何かを取り出す。
 先生の手に握られていたのは、こぶし大の丸い固体。
「それが……『金雀枝の雫』……」
ヘーゼルさんが嘆息する。
「でも、どうして噴水に隠してあるってわかったんですか?」
「どうしてかって? そうだね……」
先生は笑いながら答えた。
「一つは、クレットの残したもう一つのメッセージだよ」
「もう一つの?」
「昨日見ただろう、『去年レイジンハートで』。あれがキーだったんだ」
昨日? そういえば博物館でそんな題名の絵を見たような気がする。珍しい名前だな、とは思ったけど、どんな絵だったかまでは覚えてない。これじゃ先生を笑えない!
「どんな絵か覚えていない人のために一応説明しておくと、レイジンハート城の四季それぞれの情景を一枚の絵に収めた、C・クレットの代表作。夏は堀の周りで魚釣りに興じる人々、秋は中庭で宴会をする人々、冬は尖塔から街を眺める伯爵、そして春は、城の外で復活祭を祝う領民の姿を描いている……もう分ったでしょう」
「何が?」
「城の外は春、春は英語でスプリング、スプリングのもう一つの意味は」
「泉……そっか、だから噴水」
「言語学者だからね、これくらいできて当然さ」
先生はいかにも学者という風に胸を張って見せる。
「言語学者ってダジャレが好きなんですね」
「ダジャレじゃなくて、言語に対する音素・表記的なアプローチなんだけどな」
「それって別のものなんですか?」
「そりゃあもう、月とスッポン、ウサギとカメ、シロアリとゴキブリ並みだよ」
最後のはそこまで違わないと思うけど。
「それに、もししらみつぶしに探したとして、最後に残るのはここだろうからね」
「どうしてですか?」
先生はいたずらっぽく笑って
「城からびしょぬれで出てきたら不自然だからね」

そのあとすぐ、観光局の人たちによって城門が開けられ、ヘーゼルさんの指示によって警察が呼ばれた。イギリス警察――いわゆる、“スコットランド・ヤード”――が到着したのはそれからわずか五分後、すぐさま何人かが城内に乗り込み、庄屋さんを運んできた。私たちはと言うと、物腰は丁寧だけどちょっと怖い警部(イギリスの警察の階級制度は知らないけど、たぶんそれくらい偉い人)の取り調べを受けた。これは取り調べが終わってから聞いたことだけど、結局、先生の言った通り、庄屋さんの死因はヒ素系の毒物だったらしい。私たちの旅行は思わぬハプニングに巻き込まれながらも、なんとか終わりを迎えた。

「どうしたんだい、そんな顔して」
「なんや、センセかいな。人が考え事してるときに声かけんといてくれる?」
「考え事ね、それならいいんだ。ただ、もし一人じゃ解決できない問題なら、協力させてほしいな」
「センセには関係のないことや」
「関係がないからこそ、ということもある」
「……そうかもしれんな。それに、どうせセンセはお見通しなんやろし。」

「ウチは、あのとき、あの子を、疑った」

「センセはウチが庄屋クンの体からふき取ったのは、あの子が疑われへんようにやって言ってくれた。でも、ホンマはあの時、ウチはあの子を疑ってた。ウチが考えてたんは、センセが言ってたようなこととは全然違う。ウチはあの子を信じたらなあかんかったのに」
「……そうかもしれない。でも、それでいいんじゃないかな」
「いいって……」
「もし僕が君と同じ状況に置かれたら、きっと同じことをしていたと思う。どんなに信頼している友人であっても、いや、そういう友人であればこそ、僕はその友人を疑わずにはいられない。それでその友人を傷つけることになっても、僕は疑わずにはいられない。だって、友達を心配するのは、友達を信じるのと同じくらい当たり前のことだろう?」
「……」
「それに、もし僕が君に疑われたとしても、僕はちっとも気にしない」
「それはセンセが日ごろから疑われるようなことばっかりしてるしやろ」
「そうなの?」

 午後三時、先生の研究室。穏やかな日差しが部屋の中をやさしく照らす。
「あの……先生、ちょっといいですか」
「ん、何だい?」
「私たち、イギリスに行ったんですよね」
「そうだよ」
先生が大きくうなずく。
「じゃあ、これは何ですか?」
私が指差した机の上には、見るからに純和風な包み紙が山積みになっている。
「ういろうだよ。漢字で書くと外郎。お菓子として知られているけど、もともとは医薬品として使われていたらしいよ」
「そんなことより、どうしてイギリス土産がういろうなんですか」
「よくぞ聞いてくれました。実は最近世界各地のご当地ういろうを収集するのに凝っててね、イギリスのご当地ういろうはずっとほしいと思ってたんだよ」
先生の趣味が理解に苦しむのはいつものこと……とはいえ、ういろうしか買わないという選択に根本的な間違いがあるような気がするのは気のせい?
「ところで、これ、何味なんですか」
「茶色の包み紙はスコーン味、赤色のは紅茶味、その下になっているのがエール味とサーディン味」
「おいしいんですか、それ」
「さあ……」
これはちょっとした恐怖ですよ先生。
 なんて愚にもつかないことを考えていると、勢いよく研究室のドアが開けられた。
「ひっさしっぶり~、何してんの、センセ、あんどユーナちゃん」
「水木さん!」
入ってきたのは相変わらず和装に関西弁の(もちろん普通服装ならまだしもしゃべり方が相変ることはまずないわけだから、当たり前と言えば当たり前だけど)水木さんだった。
「何なん、この大量の箱は?」
「ああ、ちょうどいいところに来てくれた。実はこれ、君へのお土産なんだよ。今から私に行こうと思ってたんだ」
「ウチ、一緒に行ったよな、確か」
「でも、あの後あんな事件があっただろう。結局いろいろごたごたして、買えなかったかもしれないと思って」
水木さんは半信半疑ながら、
「まあ、そう言われたら確かにあんまし買い物もできてへんしな……」
「うんうん。そうだろうそうだろう」
「折角やし、もらえるんやったらもらっとくわ」
先生はその言葉を聞くと、目にもとまらぬ早業で机の上のういろうを大きな紙袋に詰めて、水木さんに押しつけた。
「いや~、ありがとう。それじゃ、気をつけて帰ってね。知らない人についていったらだめだぞ」
「子供か」
研究室から出ていく水木さんを、私たちは無言で見送った。


(Fin)

小説 『As A ……』 第回

「例えば、僕らが塔に上っていたころ、他の人たちはどこに行ってたんだろうね」
「どういうことですか?」
先生は城の天井を眺めたまま言葉をつづけた。
「この城はそんなに広い城じゃない。なのにわざわざ自由行動にするなんて、ちょっと不自然じゃないかな。全員で動いてもそう問題が起こるわけでもなさそうだ。むしろ……」
「むしろ?」
「全員で固まらないようにそうしたのかもしれない。他の人に見つからずにやらなければいけない何かのために」
「それって……」
計画的な事件だということ。そしてそれができたのは……
「ヘーゼルさんが?」
「まだ断定はできないけどね。でも、あの人は何か知っていると思うよ」
そう言えばヘーゼルさんって今銃を持って城をうろついてるんだよね。
「先生、水木さんと古手さんが危ないんじゃ……」
「大丈夫だよ、心配しなくても。たぶんだけど」
たぶん大丈夫ほどあてにならないものもない。
「何の根拠があるんですか」
「料理だよ」
「料理?」
「昨日ヘーゼルさんが作った料理、とってもおいしかった」
はい?
「それが何の関係があるんですか」
まさかあんなおいしい料理を作る人に悪い人はいない、なんて言うんじゃ…
「殺すつもりの人に、おいしい料理を作る人はいないよ」


ケイトの手の中で例の小箱が乾いた音をたてた。どうしたものだろう。誰の目にも止まらずにこれを隠しておけるところ。城の外、それもできるだけ遠いところ。南は論外だろう。わざわざ火の中に飛び込むようなものだ。かといって北に向かうのにも危険がともなう。北欧の荒くれ者たちの手に渡るのはある意味ではもっと悪い――彼らはこの箱の価値を知らないし、どれほどの敬意を払うべきかもわからないだろうから――。
あまりこの城から離れられない理由はそれだけではない。ケイト自身、長旅など今まで一度も経験したことがない。どうあがいても、南からの軍勢が来るより速く逃げることは不可能に思える。
逆説的だが、城に隠すのが最善策だろう。箱を持たずに、誰かの目に留まるように城を出る。そうすれば、城に箱が残されているとはだれも思わないだろう。
だが……、ケイトの思考はそこで止まってしまう。伯爵の当初の計画と完全に対立することになってしまう。城内でもっともそういう仕事に向いていないと思われているであろうケイトだからこそこの箱を託されたのだ。箱を持ち出さなければ、伯の期待を裏切ることになる。
ケイトの心に奇妙な感覚があった。何か思い違いをしているのではないか。伯の意図を、十分に理解していないのでは?
この箱を持って逃げろ。でも何から? 大陸からの侵略者? それとも……
ケイトは背筋が粟立つのを感じた。


どうしてこんなことになったのでしょう。折角無理を言って来てもらったのに。
どれだけ責められても文句は言えません。それは承知しているのですが……。
それにしても、このタイミングではかったようにこんなことになるのは、何らかの作為を感じずにはいられません。今まで良くしていただいたのに疑うのは失礼かもしれませんが、こっちだって泣きたい気分です。橋が戻ってしまえば、もう城の中は警察の管轄です。スコットランド・ヤードの手にかかれば城の壁の石一個一個に至るまで調べつくされるのも時間の問題です。
こういうさしせまった状況でこそいい知恵が浮かぶ、という人はおそらく無自覚な怠け者で、普段は力を出し惜しみしているだけなのでしょう。時間制限ぎりぎりで謎が解けるというのも映画ではよくある光景ですが、実際には最後の最後まで分からずじまいの方が普通です。今までずっと悩んでいたものがふとしたきっかけでひらめいてあれよあれよという間に解決、なんてのも残念ながらなさそうです。
いっそのこと、あの月見里とかいう人に聞いてみましょうか。スコットランド・ヤードの狼藉を黙って見ているよりはましに思えるから不思議ですね。


「何事も現場百辺。現場百辺。現場百辺倒だよ」
「誰が言ってたんですか、そんなこと」
「誰がも何も、推理小説の刑事はだいたいそんな感じじゃないか」
現場百辺倒って現場を重視してるのかしてないのかいまいちわかりにくい。一辺倒より百辺倒の方がすごいんだろうか。
 私たちは結局城中歩き回った末、事件のあった中庭に戻ることにした。先生も私の足に多少気がねしたみたいだ。いいところもあるんだけどね。
「この噴水で見つかったんだよね」
先生が覗き込んだ噴水はせいぜい五十センチくらいしかない。
「ここで溺れるなんてことは……」
「ありえなくはない、かもしれない」
「あるんですか、そんなこと?」
「水深五センチでも人は溺れることがある、らしい」
豆知識だ。
「水に顔を押しつけられたりとか、そういう特殊な状況ならね」
「じゃあ、水に顔を押し付けられたんでしょうか」
推測を口にしてみる。
「その可能性はある」
先生がうなずく。
「ということは、犯人は、庄屋さんを中庭に呼んで、隙をついて後ろから襲った。で、顔をこう、押しつけた」
そう言いながら噴水の方へ身を乗り出す。でも、
「浅い……ですね」
噴水の縁が邪魔をして、水面まで顔が届かない。
「もっと身を乗り出したらどうだろう。そうしたら届くんじゃないかな」
噴水の底に手をついて、何とも妙な姿勢で進む。と、
ぱきっ。
 何かが壊れる音がした。
「先生、これって……」
「……離れようか」
ああ、こうやって日本のイメージが下がっていくのだ。

「でも、ちょっと体重をかけただけで崩れちゃうなんて……」
「成長したねえ」
「違うから。それだけあの噴水のへりが脆くなってたってこと」
「なるほど」
大丈夫か先生。というかさり気に聞き捨てならないことを言われた気がする。
「これじゃ無理やり押さえつけるなんて真似はできそうにないね。そんなことをしたら噴水自体がばらばらになっちゃう」
「じゃあ、溺死以外、ってことですよね。う~ん、他には……」
転落死だったら噴水は跡形もなくなっていただろうし、刃物で刺したのなら噴水は真っ赤に染まっているはずだし、そもそも荷物が持ち込めないんじゃ凶器は使えない。
 いや、でも、小さいものだったら隠し持って入れるんじゃないだろうか。「寸鉄人を殺す」とも言うし……違うか。だいたいヘーゼルさんも物騒なもの持ってたし……
 そうだ。ヘーゼルさんならその気になれば何でも持ちこめる。銃だろうが爆弾だろうがよりどりみどりだ。
 先生はいい料理を作る人に悪い人はいないとか言ってたけど、何事にも例外というものがある。
「先生、やっぱりヘーゼルさんが犯人ですよ。だってそうとしか考えられません」
「というと?」
「だって、凶器を持ち込めるのはヘーゼルさんしかいません。そして、噴水か壊れていないということは、溺死や転落死ではないということ。つまり凶器を使った殺人だということです」
「ふむふむ。それで?」
「だから、ヘーゼルさんはどうやって庄屋さんを……」
「そう、それです。驚かないでくださいよ」
これはさすがに先生も思いつかないだろう。私は自信を持って話し出した。
「ヘーゼルさんは中空になったナイフで庄屋さんを刺したんです。そうすれば返り血は飛び散らない。出てきた血は柄の部分に袋をつけておいて、そこにたまるようにすればいいんです。ある程度時間をおいたら、素早く止血して、噴水の石組みが壊れないように注意しながら死体を水の中に放り込む。袋に入った血はお堀に捨ててしまえば誰もわかりません。たとえちょっと血が飛び散ったとしても、ふき取ってしまったらちょっとやそっとのことでは……」
そこまで言って気づいた。
「って、今はこの城閉まってるけど、七時になったら門が開いちゃうんですよね。そしたら死因なんてすぐわかっちゃいますよね。死体に刃物の跡なんかあったら一番に怪しまれちゃいますよね……」
真っ先に疑われるんじゃこんな凝った殺し方をする意味がない。
「それもそうだけど、他にも突っ込みどころはあるよ」
先生がそこに追い打ちをかける。
「例えば、凶器だけど、もし絞殺なら丈夫な紐一本あれば足りる。もしかしたらこの」
先生が自分の足元を指す。
「靴紐を使ったのかもしれないよ」
確かに先生の言う通り、凶器で絞り込むのは死因が分からない以上難しそうだ。
「それにもう一つ。自由行動ってことは、もしかしたら誰かが中庭に入ってくるかもしれないってことだ。もし計画的な殺人だったらこういう場所ではやらないんじゃないかな」
周囲を建物に囲まれたこの場所は、外からは見えにくいけど建物の中からはかなり見えやすい。ここでこそこそと何かやる気にはならない。
「でも、ある意味いい線いってると思うよ」
「そうですか?」
どこら辺がいい線なのか自分ではわからないけど、そう言われると悪い気はしない。
「何も噴水のところで死んだと決まったわけじゃない。別の場所から運ばれたのかもしれない。何者かの手によってね」
「でも、それこそ変ですよ。だって別の場所で殺したのをわざわざここに持って来る意味がないじゃないですか」
「それは……何でだろうね」


 私なのだ。
伯爵がこの箱を渡した本当の理由を、ケイトは理解した。
 ケイトが最も目立たない人間である以上に、最もふさわしい人間だからだ。
はじめてこの城に来た時のことを思い出す。白い城。伯爵が見せる笑顔。考えてみれば奇妙だ。他の人に対してそういう姿を見せたことがあっただろうか。
 そしてあの眼差し。家族に見せるような優しい瞳は私が憧れていたものではなかったか。
伯には子供はいない。伯の血はこの代で途切れる。世間ではそう思われている。しかし、もしケイトが伯爵の遠縁でもなんでも、とにかく親戚であれば、伯の血は女系とはいえ一応続くことになる。
箱は持ち込まれたのではない。最初からこの城にあったのだ。この箱が伯爵家に伝わるものであるなら、当然それを受け継ぐ権利がある。そして、大陸から来た同族もこの箱を欲しがるだろう。伯爵が心配していたのはそのことだったのだ。
ケイトはそこでいったん思考を停止した。仮にそうだとしても、やはりこの城から逃げるというのは非現実的だ。城の外が中より安全だとは思えない。
それとも、そう判断する根拠が伯爵にはあるということだろうか。
伯爵の言葉をもう一度思い出す。この箱を持って城を出なさい。城を出る。逃げるのではない。ただ城を出る。
そう言えば伯はときどき体の不調について洩らすことがあった。それも城が原因だと考えたのか。外の町の人々のように、この城に魔王の影を見ているのか。
ならば私もこの城を出よう。城の中であり、同時に城の外であるあの場所に、小箱一つを残して。伯は快くは思わないかもしれない。でも構わなかった。小箱は必ずもう一度私の手に戻ってくる。伯爵もそうなれば文句はないだろう。
ケイトは小箱をそっと撫でた。表面の文様が鈍く光っていた。



先生はしばらく中庭を調べた後、唐突に時間を尋ねた。
「時計が変なんだ。全然見当違い、あさっての方向」
「四十八時間進んでるのが分かったらすごいですよ」
「いや、そういうあさってじゃなくて」
一矢報いた気分。
「先生、時差を合わせてないんじゃないですか?」
「そんなはずはない。僕は常にグリニッジ標準時で動いている超国際人だよ。合わせるまでもなくピッタリになってないとおかしいんだけどなあ」
「あ、じゃあ、もしかしたら私のせいかも。一ヶ月くらい前に先生の時計がすごくずれてたから合わせようと思って」
「なるほど、それでこの一ヶ月なんだか調子が出なかったのか」
一ヶ月もよく気付かずに過ごせたものだ。
「私の時計によると、七時十五分前です」
「ということは」
「あと十五分で外へ出られるってことです」
「何だって。じゃあ、あと十五分でみんな外に出ちゃうのかい?」
そう言ったつもりだけど。
「至急、他の人たちを呼んでこよう」
「ちょっと待ったぁ!」
振り返るとそこには木の上からさっそうと登場する水木さんの姿が。
「いつからいたんですか?」
「それを聞くのは野暮ってもんやろ……っと」
木から飛び降り、着地を決める。さすが先生の知り合いなだけあって、行動に謎が多い。
「センセはむかしから何でも頑張りすぎるところがあるからな。ほっといたらええのに首突っ込んで、引っかき回して……」
「単刀直入に言ってもらえるかな」
「要は、この事件に首を突っ込むな、ちゅうことや、ウチらのためにも、センセのためにも」
鋭い眼光。今まで見せたことのない、射抜くような視線。別の世界の存在であることを、本能的に感じさせる何か。巧妙に隠されていたものがあらわになったような、見てはいけないものを見てしまったような、そんな空恐ろしさがこみあげてくる。
 この人は、本当はそういう人なのだ。
「君は何か勘違いをしている。確かに僕は時々やりすぎちゃうこともあるけど、今回に限って言えば僕が首を突っ込んだ方がいい、僕らのためにも、君たちのためにもね」
先生も一歩も引かずに水木さんを見返す。
「ヘーゼルさんと古手さんを呼んできてもらえるかな」
「……分かった。ほんまに大丈夫なんやろな。もしちゃうかったら……」
「大丈夫。僕が保証する」
毅然として宣言する。いつもの適当な態度からは想像もつかない堂々とした(そして想像もつかないほど真面目な)物腰。ほっぺたをつねって夢かどうか確認したい気分になる。
 水木さんがいそいそと城の建物の中に入っていくのを見ながら、私は先生に質問してみた。
「先生、大丈夫ですか?」
「何が?」
「何だか別人みたいでしたよ。ものすごく真剣というか、真面目というか」
「それって、まるで僕が普段真剣に真面目に生きていないみたいじゃないか」
自覚はないのか?
「まあ、とにかく、ちょうどいいところに出てきてくれてよかった。銃を持ってうろついてる人を呼びに行くのはちょっと怖いからね」
やっぱりさっきまでの先生の雄姿は夢だったのか。

「さて、この事件は……、いや、違うな」
「何ブツブツ喋ってるんですか?」
さっきからおかしくなってしまったのではないかと心配して聞いてみる。
「これはブツブツじゃなくて、立派な予行演習なんだよ。僕の推理を待っている人たちのために、ベストを尽くさなければならないんだ」
何だか、責任感のある人みたいなオーラが出ている。やっぱりおかしくなったんだ。
「そう、僕を信じている人のために……って、痛い痛い」
「夢じゃないんだ……」
「普通自分のほっぺたで試すんじゃないかな、そういうことは」
自分ので試してみる。やっぱり痛い。
「何遊んでるんや。この通り連れてきたし、はよ始めてや」
振り返ると、警戒の色濃いヘーゼルさん、疑問の色濃い古手さん、そして何故か疲労の色濃い水木さん。
「じゃあ、全員そろったようだから、始めようか。時間もあまりないことだし」
先生が静かに語りだす。
「さて――」


(続く)

小説 『As A ……』 第Ⅳ回

「先生はどう思います、さっきの話?」
「さっきの?海堂尊と瀬名秀明はどっちが強いかって話かい?」
「違います」
だいたいホラー文庫とこのミスでは毛色もだいぶ違うし、そもそも何で戦わせる必要が?
「だから、ヘーゼルさんが言ってた“魔王城”の話ですよ」
「ああ、あれね。僕はちょっと信じられないな。こういう観光地には真偽の知れない伝説はつきものだからね。例えば、よく言われることだけど、日本には源義経臨終の地が全部で十か所あるとか。だからあまり鵜呑みにはできないと思うよ」
「へえ、意外ですね。先生はもっとこういうの信じちゃう人だと思ってた」
「失敬な。僕はこれでも科学者の端くれだよ。“魔王”だなんて信じるわけがないじゃあないか」
先生と私は内容があるのかないのか分からないような会話を交わしながら階段を上っている。レイジンハート城、西の尖塔。そこに通じる階段はかなり急な上、ところどころボロくなって段の石の一部が取れたり外れたりしている。
「ふぅ、やっと頂上だ。いや~、絶景哉絶景哉」
先生はどういうわけか高いところが好きだ。高い所に上ると決まって……
「見ろ!人がゴミのようだ!」
ほんとにムスカが好きだね。
「ほら、優菜もはやくおいでよ。いい景色だ」
遅れて尖塔の最上部の小部屋につく。南側に大きく窓が開いていて、そこから外が見えるようになっている。私は窓の向こうを眺めた。
 眼前に広がるのはグッタペルカの街並みだ。石造りの伝統的な建物が多い。けど、昼間なのに人っ子ひとりいない。しんと静まり返っている。その向こうにあるのは何かの工場だろうか?もう長い間使われていないらしく、鉄骨がむき出しになっている。町を越えるとそこには荒涼とした丘陵地が広がるばかり。確かに絶景だけど、毎日見たくはないタイプの景色だ。
 世界の終わり。そんな言葉が思い浮かんだ。どこまでも続く荒野、誰もいない町、そんな風にして世界は終わっていくのだろう。そしてその様子を尖塔から見守る一つの影、それがきっと魔王なのだ。

 どれくらいそうしていたのか分からない。ただ、確かなことは、私が今聞いたのは、吹き抜ける風の音ではなくて、女の人の悲鳴だったということだけだ。
「先生!」
「下だ。急ごう」
身を翻し、階段を駆け降りる先生。
「あっ」
……確かなことは、私が今聞いたのは、階段を駆け降りる足音ではなくて……

 どすん。

 下に落ちた先生と下に降りた私は急いで声のした方に向かった。城の中庭。ツタと灌木で彩られた中央の噴水。水木さんが眺めているその水の中。ヘーゼルさんが引きずりあげたのは、
「庄屋さん……」
「そうだ。早く警察に連絡した方が」
先生が冷静に指摘する。
「よし、百十番だ」
ここはイギリスなんだけど。
「あれ?ない……」
「申し訳ありません。城に入る前に荷物は全部預からせていただいたので、たぶんその中に……あと、この町では携帯電話は通じないと思います、アンテナがないので」
そう言われれば、荷物は預けたんだった。
「城に備え付けの電話があったはずです。私がかけてきます」
ヘーゼルさんが走り出す。先生はそれを見届け、動かない庄屋さんの手首をとった。
「……だめだ」
先生が首を振る。でも、その眼はただ悲しみに暮れているわけじゃない。先生のその眼は真実を探していた。

「外と連絡が取れない?」
「はい、電話線が切られていて、電話は使えません。城門は外からリモートコントロールでしか開けられません」
私と先生、ヘーゼルさんと水木さん、そして古手さんと、動かない庄屋さん。六人は中庭でこの事故とも事件ともつかない出来事にどう対応すればいいのか話していた。もっとも、話しているのは先生とヘーゼルさんの二人だけだけど。
 私はとくにやることもないので手持ちぶさたで庭を眺めていた。東西北の三方を城の建物に囲まれた庭は、各方向に一か所ずつの出入り口がある。南側には私たちが上った尖塔が見える。建物全体は上から見るとちょうど「コ」の字になっていて、私たちのいる中庭はそのへこみの所にある。
 庭を飾っているのはそれほど樹高の高くない草木だ。いくつか日本でもよく見る種類もある。こういうとき植物の名前をよく知っている人がうらやましくなる。どこにあったかは分かるのに何て名前か分からないのはちょっともどかしい。銀行の前なんかでよく見る植え込み――仮に、「銀行の前の木」とでも呼んでおこう――が薄い日の光を浴びて丸くなっている。南が開けているのは、日光を差し込ますためなんだ、と気づいた。
 緯度の加減か少しくすんだ緑の中に、放心したように水木さんが立っている。水木さんも私と同じで、先生とヘーゼルさんの会話に加わるでもなく、かといってこのまま観光を続ける気分にもなれず、中途半端な気持ちのまま宙ぶらりんになっているんだろう。水木さんの視線の先をたどると、噴水のそばの古手さんに行きついた。突然のことだけに、みんなどう対応すべきかもわからないのだ。
「みなさん、聞いて下さい」
ヘーゼルさんが声を上げた。
「電話が通じなくても夜の七時には外から門を開ける手はずになっています。ですから……」
全員、息をのむ。
「適当に城内を散策なさってください」
「って、何でやねん」
目の前でボケられるとほぼ条件反射的に反応するらしい。こんな関西人にだけはなりたくないものだ。
「理由については月見里さんの方からお話ししていただくとして……」
「はい、只今ご紹介にあずかりました月見里です」
先生が若干無理やり後を継ぐ。
「検死官もいないし、死因はおろか事故か殺人かも分からないんだよ。もし事故だったらとりあえず現状だけ保存しておけば大丈夫だろう」
「もし殺人やったらどうするんや?こん中に殺人犯がおるかもしれんのやろ」
至極まっとうな疑問。
「もしそうだったとして、僕らは犯罪心理学の専門家じゃないわけだし、殺人犯の心理なんてわからないわけだよ。次に彼が――彼女かもしれないけど――どういう行動をとるのかも予想できない。固まって行動するべきか、それともばらばらに動いた方がいいのか、判断のしようがないじゃないか」
不安すぎる回答。
「どちらにせよ、せっかく来たんだから、見られるものは見ていこうよ」
そして本音すぎる一言。
「たしかに月見里さんの言うことにも一理あるのです。この中に殺人犯がいるのならなおのこと。というわけで七時までさよならなのです」
よく言われる話だけど、推理物のマンガなんかで単独行動する人ってたいていすぐに殺されるよね。
「あ、もちろん殺人犯がここにいる以外の人間で、今も城の中で息をひそめている可能性も無きにしも非ず、だから、用心した方がいいですよ」
先生の呼びかけに一瞬足を止めて、それでも振り向くことなく古手さんは北側の出入り口から出て行った。
「大丈夫かなあ」
「そうですね。私、見てきます」
無責任極まりない先生。ヘーゼルさんと並ぶとかすんで見える。
「みなさんも、今回のことはお気になさらず、どうかこのままお続けになって下さい。私は……」
城を見上げるヘーゼルさん。
「あやしい人間がいないか城内を見回っておきます」
「で、もしあやしい人がいたら?」
先生の問いにヘーゼルさんは腰にさした黒光りする武器を見せて答えた。
「英国淑女たるもの、客人を脅かす不埒な人間を許しておくわけには参りません。もしそんな輩がいたら、この$&Wのサビになっていただきます」
物騒な淑女だ。
「じゃあ、僕たちも行こうか、ここにいても仕方ないし」
銃を持った自称淑女がうろうろしてる城の中に入るよりは仕方あるような気もするけど。
「心配しなくても大丈夫だよ。何も起こらないから」
先生は自信ありげに言う。自信ありげなのはいつものことだけど。
「でも、さっきは何も分からないって……」
「そうだったっけ?」
いたずらっぽい笑みを見せる先生。
「本当はもう分かってるの?」
「それをいまから確かめに行くんじゃないか」


恐れていたことが現実になるのと、思いもよらなかった悲劇が突然起こるのだったらどちらの方がより痛みが少ないのだろう。
 もし答えが出せたとしても、それは何の役にも立たない、何故なら、すでにそれは起こってしまったのだから。
 あれほど釘をさしておいたのに、やっぱりこんなことになってしまうなんて。まして、あの人がいるこの城の中で。
 中庭に入った時点ではっきり分かった。誰が何をしたのか、自分はどうすべきなのか。
 心配する必要はなかった。完璧に偽装する必要はない。ただ時間が稼げればそれでいい。あの人に真相にたどり着く時間を与えてはならない。
 今度はあの時のようにはいかない。今度は勝ってみせる。


机の上に箱を鎮座させたまま、ケイトと伯爵は互いに相手が口を開くのを待っていた。プランタジネットの紋。今まさにこの地を征服せんとする大陸の一族の旗印。。
南に抵抗を続けるイングランドの者たち。それは誇張ではなくあまりにも遠い出来事だった。極論を言えば、彼らが大陸の民と闘っている間は、イングランドの脅威に晒されずに済む、という見方さえできた。
しかし、この木箱がこの北部丘陵に存在するとなると、事態は変わってくる。この地にも危機が及ぶかもしれない。いや、確実にそうなるだろう。
ケイト。伯は語りかけた。この箱を持って城を出なさい。この箱が誰かの手に渡ることがないように。


先生はさっきからずっと城の中を歩き回ってばっかり。私は一応身の安全のためについていってはいるけど、実際どれほど頼りになるんだか。
「広いね。思ってたよりずっと広い」
「それを確かめにわざわざ歩き回ってたんですか?」
「まさか、ちゃんと頑張ってるよ。こう見えても僕は根は真面目だからね」
根は真面目って、真面目に見えない自覚はあるってことか。
「例えば、分かったことが一つ」
「何ですか?」
「この城は広い」
「さっき聞きました」
やっぱり何も考えてないのか。
「こんなに広いんだから、何か隠されていたら簡単には見つからないだろうね」
「え?」
「本当に大事なのは、この城自体じゃないかな」
先生のつぶやきが城の高い天井に吸い込まれていった。


 こんなことなら来なければよかった。まさか彼女の予想した通りの結末になってしまうなんて、何たる皮肉。
 しかし計画を止めるわけにはいかない。立ち止まってはすべてが水の泡だ。同志の死を悲しむよりやるべきことがある。
 常に感情を押し殺す稼業はこういうとき不便だ。最も悲しむべきことは悲しむべき時に悲しめないことだ、というのは誰の言葉だったか。心の中は自分でも不気味なほど平静で、それが狂気の証明にも思えた。
 本来ならこんな騒ぎも起きず、静かに目的を達成できたはずだった。人が死ぬなんて、そんな話は聞かされていない。あくまでもついて来るだけだと。
 それとも、こういう事態になることを最初から予期していた?
 とにかく、後で少しかまをかけてみようか。疑うわけではないが、あれは何を考えているか分からないところがあるから。
 しかし一方で、それは見当違いな心配ではないかという気もする。怪しむとしたら、もう一人の方だ。いくらなんでも偶然が過ぎる。第一発見者を疑えというではないか。
 ついつい疑心暗鬼に陥りそうになってしまう。疑いばかりが膨らんでも何も変わらないというのに。
 冷静に考えて、内部の人間ではリスクが高すぎる。各人の行動を予測できるわけはないのだから。そんな状況で少なくとも計画的犯行というのはあり得ない。
無理やり内部犯の可能性を消す。疑いを抱いたまま大仕事はさすがに嫌だ。
この計画だ。これさえ終えれば、何に縛られることもない。
 こんなことをした人間にはその報いを受けてもらおう。




(続く)
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